香港北部・新界地区大埔(タイポ)にある高層住宅群で発生した大規模火災。死者55人、行方不明者300人近くという大惨事となっていますが、現地ではある「リアルタイム安否確認シート」の存在が注目を集めています。
SNSや現地コミュニティで共有されているこのリストからは、単なる火災事故以上の、香港社会が抱える「高齢化」と「住宅事情」の闇が浮き彫りになってきました。
目次
赤・青・黄…色分けされた「生死の境界線」

現地で作成されたとされる安否確認のスプレッドシート(Googleフォーム等で集計)画像からは、緊迫した状況が生々しく伝わってきます。31階建て、築40年以上の巨大な公営住宅の住民たちの安否が、以下のルールで色分けされています。
【安否状況の分析】

- 赤色 消息不明・救助要請(死亡の可能性高)
情報源がなく、連絡が途絶えている部屋。もっとも深刻な状況。 - 黄色 人は無事だがペット未救助
「猫が取り残されている」「犬が閉じ込められた」等の悲痛な叫びが含まれる。 - 紫色 情報錯綜
安全かもしれないが確証がない状態。 - 青色 安否確認済み
生存が確認された部屋。
「階数」ではなく「部屋番号(縦列)」で決まる生死

このリストを詳細に分析すると、ある恐ろしい法則が見えてきます。
通常、火災は「上層階ほど危険」と思われがちですが、今回の表を見ると「●●号室」という縦のライン(垂直方向)が赤く染まっている箇所が目立ちます。これは、配管やダクトスペースを通じて煙や炎が縦方向に一気に拡散した可能性を示唆しています。
「どの階に住むか」ではなく、「建物のどの位置(ライン)に住むか」が生死を分けた可能性があります。
「99歳」「70歳」…浮き彫りになる高齢化団地の実態

安否リストの備考欄(Remarks)には、胸が締め付けられるような記述が並んでいます。
- 「99歳のお婆さんと70歳の方が行方不明」
- 「行動不便な高齢者が取り残されている」
- 「94歳の寝たきりの方」
ここから見えてくるのは、この高層住宅が決して富裕層向けの「タワーマンション」ではないという事実です。
日本の「UR団地」に近い?香港の住宅事情
日本では「タワマン=高所得者」のイメージが強いですが、今回の現場は築40年以上の公営住宅。実態は、日本の「昭和のUR公営団地」がそのまま30階建てになったような環境です。
| 香港の公営住宅の役割 | 香港政府が「年金・社会保障の代わり」として提供するセーフティネット。 |
|---|---|
| 民間市場の現実 | 民間デベロッパーは利益率の低い「貧困老人層」への賃貸を嫌う傾向がある。 |
| 結果 | 行き場のない高齢者や低所得者が、老朽化した高層公営住宅に密集して暮らすことになる。 |
「なんとか住居を提供したいが、管理費用や維持修繕が追いついているか怪しい」。そんなギリギリの均衡で成り立っていた生活の場が、ひとたび火災に見舞われた結果、避難弱者である高齢者が多数巻き込まれる大惨事となってしまいました。
この悲劇は、インフラの老朽化と高齢化が進む日本にとっても、決して対岸の火事とは言えません。








