箕輪町のクマ対策に学ぶ、地域を守る「ゾーニング」の力とは?「目撃件数は53%減、錯誤捕獲は82%減」詳しく解説

箕輪町のクマ対策に学ぶ、地域を守る「ゾーニング」の力「 目撃件数は53%減、錯誤捕獲は82%減  」

長野県箕輪町で、ツキノワグマとの”出会わない工夫”が成果を上げています。

2025年6月から本格導入した「ゾーニング」という取り組みで、クマの目撃件数が前年の19件から9件へとほぼ半減。シカ用の罠に誤ってかかってしまうクマも、17頭から3頭へと大きく減りました。

白鳥政徳町長は「緩衝地帯をつくり、クマを引き寄せるものを減らし、果樹園への侵入を防ぐ。これらが組み合わさって効いたのだと思います」と話します。

そもそも「ゾーニング」って?

ゾーニングとは、クマの暮らす森と、私たち人間の生活圏をはっきり分けて、お互いが鉢合わせしないように工夫する方法です。

**森の奥(コア域)**では、クマの生態を見守りながら、むやみに人が入らないよう配慮します。

**その手前(緩衝帯)**には”クッション”のような役割の空間を設けます。ここでは草や藪を刈り払って見通しを良くし、クマが隠れる場所をなくします。残飯や落ちた果物もきちんと片付けます。

**集落や農地(人域)**では、生ゴミの管理を徹底したり、電気柵を張ったり、クマが「ここは人の場所だ」と分かるようにします。

箕輪町の数字が物語るもの

昨年度と今年度(10月24日まで)を比べると、目撃のピークが6〜7月、9月だったのが、今年は8〜9月中心に。10月は1件だけでした。秋のピーク時期が短く、落ち着いてきているようです。

錯誤捕獲が82%も減ったのは、罠を仕掛ける場所や時期を見直した成果でもあります。県内では10の市町村がゾーニングを導入しており、上伊那地域では伊那市と箕輪町が先行しています。白鳥町長も「広域で連携することが大切」と強調しています。

成功の鍵は「見通し」と「誘引物ゼロ」

箕輪町の取り組みを、他の地域でも活かせるように整理してみました。

空間のデザイン

まずは過去2〜3年のクマの出没地点を地図に落とし込みます。クリやクルミ、柿、リンゴといった餌になる木がどこにあるか、沢や藪の濃い場所、通学路やゴミ捨て場も重ね合わせます。

緩衝帯の幅は、地形や土地の所有状況に合わせて50〜200メートルほど。地面から1.2〜1.5メートルの高さまで下草を刈って、クマの姿が遠くからでも見えるようにします。

この地図は季節ごと、特に秋の実りの時期には追加で見直します。

緩衝帯の手入れ

  • 草刈り補助:面積と回数に応じて補助金を出し、住民が継続しやすくします。年2回は最低ライン。
  • 落果ゼロ運動:熟して落ちた果実は7日以内に回収。剪定した枝や皮も密閉して、その日のうちに処分場へ。
  • 電気柵の基本:地面から20センチ、50センチ、80センチの三段張り。週に一度は周りの草を刈って、電気がしっかり流れるようにします。
  • ゴミ管理:前夜には出さない。頑丈なボックスに入れ、回収時刻を守る。

住民みんなでできること

  • 通学路の点検:学期ごとに、藪や放置された竹林、空き家の周りをチェック。
  • 見かけたら:近寄らない。背中を向けて走らない。110番と町の窓口に場所を知らせる。
  • 音で伝える:早朝や夕方は、話し声やクマ鈴で「人がいるよ」と伝えます。

どれくらい効果が出ているか測る

導入1年目に見るべき数字を整理しておくと、改善の手応えが見えてきます。

  • 目撃の密度(1平方キロあたり何件か)
  • 錯誤捕獲の割合
  • 通報から現場到着までの時間
  • 緩衝帯で見通しが確保できている区間の割合
  • 落果や生ゴミの放置についての注意件数

半年で30%減、1年で50%減を目標にすると、達成感も生まれます。

季節に合わせた”先回り”

春(4〜5月):新芽が出る前に1回目の草刈り。ゴミ置き場の補修も。

初夏(6〜7月):子連れのクマが動く時期。通学路の草丈管理と注意喚起。

秋(8〜10月):木の実が実るピーク。落果は即日回収、柵の電圧もこまめに確認。

冬(11〜3月):データを整理して次の年の計画を練り、補助金の申請準備。

よくある誤解を解く

「クマ鈴をつければ大丈夫」と思いがちですが、人に慣れてしまったクマには効果が薄いこともあります。やはり見通しを良くして、餌になるものを置かないのが基本です。

「罠を増やせば解決」も誤解。誤って捕まるクマが増えてしまい、逆効果になることも。空間設計とセットで考える必要があります。

「1回刈ればいい」もNG。年に2〜3回は手入れを続けないと、すぐに元通りになってしまいます。

効果を確かめる簡易レポート

箕輪町のデータをもとに、短い検証レポートの形にまとめると、こんな風になります。

題目:長野県箕輪町におけるゾーニング導入後のツキノワグマ出没の短期効果

概要:2025年6月に緩衝帯整備、誘引物管理、果樹園への侵入防止を組み合わせた「ゾーニング」を導入したところ、目撃件数は53%減、錯誤捕獲は82%減という短期的な成果が見られました。見通しの確保と誘引物の除去が、複合的に効いたと考えられます。

背景:全国で人とクマの軋轢が課題になる中、空間的に分ける「ゾーニング」の効果を、町のスケールで検証しました。

方法:前年を対照群、今年を介入群として比較。目撃件数、錯誤捕獲、月ごとの分布を追いました。

結果:総件数は半減。秋のピークが縮小し、錯誤捕獲も大幅減。

考察:草刈りで視界を開き、落果を徹底回収し、柵をきちんと管理することで、クマと人が接触する機会が物理的に減ったと見られます。今後は広域の自治体で連続した緩衝帯をつくることが課題です。

限界:前後比較のため、木の実の豊凶や気象など外的要因の影響を完全には排除できていません。

結論:ゾーニングは短期的に有効。数字を見守りながら、広域で展開していけば、効果は続くと期待されます。

すぐに始められるチェックリスト

  • □ 緩衝帯のラインが途切れていないか地図で確認
  • □ 年2〜3回の草刈り計画と補助の仕組みづくり
  • □ 落果・剪定枝をその日のうちに処分するルールと容器
  • □ 電気柵の電圧、アース、草刈り担当を決める
  • □ ゴミ出し時刻を統一し、丈夫なボックスを用意
  • □ 学校や自治会で年2回、通報の訓練をする
  • □ 数字(KPI)を住民に見える形で公開する

箕輪町の取り組みは、特別な技術や莫大な予算がなくても、地域の人たちが協力し合えば成果が出ることを教えてくれます。

クマも人も、安心して暮らせる里山を、少しずつ、一緒につくっていく。そんな希望が、この数字の向こうに見えてきます。

この記事を書いた人: NEWS FOREST 編集部

独立系メディアとして、自然・社会・人の調和をテーマに取材・発信を行っています。

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